2011.4.5

店主インタビュー 三溪洞

三谷晴弘氏

Q こちらの画廊はいつ頃から始まったのでしょうか?

A 高祖父の代くらいから美術商というか、当時は書画屋とか骨董屋と言っていました。掛け軸を中心に扱うお店としてスタートしています。その前は両替屋でした。

Q では、主に絵画を扱ってこられたんですか?

A そうでもないんです。始めは書画屋ですから古い江戸時代のものを扱っていたのですが、祖父の代になってから、近現代の絵画工芸品ということで幅広く、明治以降の洋画、日本画、焼きもの、漆芸、金工、彫刻などを扱っています。誰が作ったものかわかるようなものになりますね。

Q 三谷さんが個人的に好きなジャンルや作家はどういったものですか?

A 今はわりとわかりやすいものが好まれるのですけれども、僕はどちらかというと叙情的というか、独特の雰囲気があって、世界観を持っている作家さんが好きですね。日本画で言うと、山本丘人さんは素晴らしいと思います。版画の作家で清宮質文さんなど自分の独特の絵画空間を持っている作家さんが好きですね。工芸品では、今は失われてしまった技法が一昔前の作家にはあったりするので、もう二度と出来ないだろうな、というようなものは素晴らしいと思います。

Q 今回の東京アートアンティークではどういった作家さんを押してらっしゃるのですか?
A 今までうちは中堅から画壇の上の方の方、文化勲章とか芸術院会員におなりになった先生方の作品を扱うことが多かったんですけど、今回の東京アートアンティークでは、今唯一といっていいかもしれませんが、若手で扱っている東園君の作品を新作含めて個展という形でやらせていただこうと思っています。今回、こういった大震災があって、有楽町のアートフェア東京が延期になりましたので、本当は巡回展の予定だったんですが、東園君の新作展を画廊でやります。その後あまり間を置かずに東京アートアンティークがありますので、続けて東園君の作品を飾らせていただこうと思います。新作だけではなくて、去年、一昨年にやった作品の一部も展示させていただきます。

Q おいくつの作家さんでしょうか?

A 今35才ですね。彼の世代は結構作家活動をして頑張っている方が多いので、同年代の仲間たちと一所懸命頑張っています。また、今こういった景気で、大御所の先生方の企画というのが減っていますので、そういう意味では、若手の人たちが発表する場が比較的多いと思うんです。景気が良くて高い先生の作品がどんどん売れるとなるとそういう企画が多くなって、若手にはなかなかスポットが当たらないというか、難しいと思うんですけど、こういった時だからこそ、若手の人にチャンスもあると思いますね。現に今自分で場所を探して発表していこうという作家が多いので、若手の作品を見るにはいい環境かなと思います。作家の世代も変わって来ていますし、お客様のほうも変わって来ているので、今までの見方をなさらないお客様方も増えています。作家としても色々な作品を作る作家が出て来て、それを評価するお客様も出て来てるという感じじゃないでしょうか。

Q 作品を買うお客さんが変わって来ているとは?

A もちろん美術品が好きで住空間に取り入れて楽しく過ごしたいというのは同じなのですけれども、好みは変化がありますよね。今は住環境として和室が少なくなって来ていますので、床の間がなかったり、そうなると軸装になっているものは特に東京では向かなくなって来ている。後は、古典を題材にした文人画のようなものはなかなか理解できる方が少なくなって来ていますね。元々の古典の話を知っていると楽しめるんですけど、それを知らないと、何故この場面が描かれているのかがわからなかったりするので、それよりは花や風景が描かれている方がわかりやすいですよね。でも美術品に対する態度というか、関わり方というのは変わらないと思います。

Q 東園さんはどういったきっかけで?

A 元々は学習院で中学、高校と同級生だったんですけれども、彼は多摩美術大学に進学しまして、私はそのことは全然知らなかったんですが、卒業して、お互い仕事をはじめまして、私は実家の美術の仕事をしていたのですが、ある時美術雑誌で彼が個展をやるという広告を目にしまして、名前がとても特徴的なので、びっくりしまして、会場に行って再会したというのが経緯なんです。まさか彼が画家の道へ進んでいるとは知らずに、彼も僕の家がこういう仕事だということも知りませんでしたし、何かの偶然と言いますか、再会しまして。その頃にはすでに彼も個展を何度かされていて、お付き合いしているお店も何軒かあったのですが、しばらくそういったお店でやっている展示を見せていただいて、これなら面白いな、ということで、僕のところでやらないかと声をかけました。彼の作品は、日本古来の文様を使って作品を描いているのですけれども、画材や技法はいわゆる日本画の技法を使っていまして、多摩美の日本画を出ていますから、基本に忠実な描き方をした上でデザイン的に仕上がっています。文様の組み合わせなどに彼の独特のセンスがあると思いますが、印刷物やウェブ状で見ると、とてもイラスト的に見えるかも知れません。ですが実際に見るととても緻密に手で描かれていて、盛り上がっている部分があったりしますので、是非実物を見ていただきたいなと思います。

Q 休みの日は何をされているのですか?また趣味は何かありますか?

A 美術館に行くのは仕事の一部でもあり、趣味でもありますが、他にはドライブとか食べに行ったリですかね。今はあまり時間がなくなってしまっていますが、大学時代は写真部に入っていたので写真は好きです。書道は今でもやっています。書も好きで興味があります。

Q 品物の仕入れはどのようにされているのですか?

A 海外に限らず、今現在流通している美術品というのは、相場があって売り買いされているものは業者が集まる交換会や業者間での売買もありますし、お客様から出て来て買取をする、あるいは現存の先生であれば、新作を描いていただくと、大きくこの3つがありますね。

Q まだ作品は出てくるのですか?

A 基本的には美術館や博物館に一度入ってしまうとそこからはもう出てこないですし、個人のコレクターの方であれば、美術館博物館を作られている方でなければ、またその方がお亡くなりになったり、またはその方が入れ替えをしたいと思われたら我々の市場に出て来たりするというということもあります。ただ今はオークションも増えましたので、ここに行けば必ずいいものが出るということがなくなりましたね。それにいいものをお持ちの方でも、今は手放したくないとお考えの方も多いです。そういうものが出てくると活気が出ると思うのですが、基本的にはいいものが出てきにくい状況ではありますね。

Q 海外の作家を扱うことはないのですか?

A 過去にお客様のご要望でお探ししたことはありますね。日本人が好きな外国の作家もいますので、そういったこともやりますけど、普段から積極的にというわけではないです。今すごく中国美術が盛り上がっていますけれども、20以上前には中国の元の染付けのお皿を売ったりしたこともあります。今だったら何十倍の値段になってたと思うんですけど、当時でも高かったと聞きます。やっぱり世界相手のマーケットのある美術品というのは、日本の景気が悪くても、海外に持って行けば高く売れたりするんです。でも残念ながら今現在、日本画とか洋画などの日本人作家で世界のマーケットで日本国内と同じような評価を受けている作家はほとんどいないのが現状ですね。藤田嗣治さんが世界でも知名度があって評価されていますけれども。まだまだ日本の美術品というのは世界で通用するところまでいってないですね。そういう分野もありますけれども、古いものが多いですね。

Q 最後に東京アートアンティークに来られる方に一言メッセージをお願いします。

A うちの店が普段飾っている作品とは違うのですが、若手の作家でこれから面白い作品を作って行く作家だと思いますので、始めての方もご存知の方も新作展なので、東園君の作品を見に来ていただきたいと思います。東京アートアンティークは、色んなジャンルの美術品を扱うお店が参加していますので、今まで美術品に親しんでこられた方もそうでない方もこれを機会に自分の好みのものを見つけることができると思うので、マップを片手に楽しんでいただきたいと思います。

お忙しい中ありがとうございました。

(2011年4月)

三渓洞

東京都中央区日本橋室町4-3-15

http://www.sankeido.co.jp/

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