2017.4.4

(お茶菓子編)生活の中に豊かさ(アート)を −−ワンランク上のおもてなし その1

「美術品」や「アート」は見に行くだけでも心が豊かになり、楽しい気分になったり、考えさせられたり、遠い昔の名も無い作り手に想いを馳せる楽しみとなります。ですが、それらが実際に「生活の中にある」というのはまた違う豊かさを人生に与えてくれるものです。とはいえ、使えるものから鑑賞を目的としたもの、手頃なものから手が届きそうにないまで様々です。また、普段使いのものと「美術品」を区別したいと思う方もおられるかもしれません。

ですが、「楽しい」とシンプルに思えることが美術品と接する第一歩だとすれば、普段使えるものを生活の中で楽しみ、実際に使うということをぜひ初めてみてください。美術の世界はそこからでも大きく広がっていくでしょう。

今回は来客をもてなすために「使いたくなる」ことをテーマにいくつかの参加店に作品を紹介してもらいました。

(写真)

 

器で迎える心遣い

まず最初は生活の中で「使う」ことができる器類で少し変わったものをいくつかご紹介します。

誰にでも自分の美意識や目的に応じて柔軟にものや事柄を変容させて楽しむ豊かな想像力があるように思います。そこにはもてなす側の想いや粋な遊び心があります。器が変わると、お茶菓子も花も見え方が変わるように、急な来客があって、立派なお茶菓子やお花が準備できなくても、器ひとつで相手に対する心遣いや人柄が見えてくるような個性的な器の使い方を中心にご紹介します。

最後には、

と題して、壁にかける美術作品をご紹介します。絵画作品はもちろんのこと、工夫次第で様々なものを壁にかけて楽しむことができます。また、壁にかけるだけでなく、立てかけたり、他のものと組み合わせたり、思っている以上に楽しみ方が豊富です。

 

お茶菓子編

最初は「草友舎」の15,6世紀のヨーロッパの教会に使われていたタイルをお皿に見立てたもの。通常は壁に掛けて楽しむことが多いようですが、存在感があり、異国に遊びに来たかのよう。器が変わるだけで、普段よく目にする種類のお菓子にも特別感を与えているようです。素朴なお菓子が合いそうですね。焼き締めの器と同じように扱えそうです。

葉の形をした備前の緋襷(ひだすき)は「魯卿あん(しぶや黒田陶苑)」に出していただいた北大路魯山人の作。皿の原点は葉である、とも言われるそうで、春風を感じとれるような組み合わせになりました。今回は季節柄、桜の可愛らしいお菓子を合わせていただきました。お菓子によって季節感をより引き出してくれるお皿ではないでしょうか。洋菓子とコーヒーの組み合わせにも合いそうな逸品です。葉脈が描かれ、一つとして同じ形、模様がない生命感を感じる個性豊かなお皿です。

奈々八」からは李朝の白磁のお皿。お茶菓子には大きいかしらと思ってしまいそうですが、あえて小さな白いおまんじゅうをちょこんと乗せて。古いお皿は長い年月を経て変色し、シミができ、自然な深い味わいが出るそう。小さなおまんじゅうを大きな時間の流れを感じながら、ゆっくり味わいたくなります。

花筥」からは竹工芸作家、初田徹の作品で干菓子器と呼ばれるお茶席で使われる菓子器。来客が多い時にテーブルの真ん中に置いて取ってもらったり、皆で廻し合ったり。形も変わっているのでちょっとイベント感覚でワイワイ楽しめそうです。

最後に染付のお皿を2つご紹介いたします。

一つは「前坂晴天堂」のクッキーやチョコレートといったオーソドックスな洋菓子を乗せた花文皿。コーヒー染付の蕎麦猪口で出せば、現代的にも風情があるようにも見えるのがいいですね。気をわずに気に入った柄の染付を使う頻度も増えるというものです。

もう一つは「祥雲」の魚文皿。なんとも綺麗な若葉色が映えます。「祥雲」ではお菓子とお皿の組み合わせで心がけていることがあるとのことで、教えて頂いたことをここで皆さんにシェアいたします。

まず、花をかたどるなどの、具象的な形の菓子には無地感覚の器を合わせ、具体的なものをあらわさない今回のような菓子には模様のある器を合わせます。直接的な形をあらわしたものよりも、色や素材で季節をあらわしたお菓子を用いることが多いそうです。菓子と器の大きさは、少し空間(余白)のある盛り方をしますが、それぞれの器に合ったバランスを考えてお菓子を選びます。楽しいけれど、悩むところだとか。時には中央に模様のあるお皿も、食べた後にあらわれて、楽しみの一つになります。夏などは土ものや木地の器を濡らして使うのも、涼しげで良いそう。

ぜひ皆さんもお皿とお菓子選びに役立ててください!

*器とお菓子の詳細が知りたい方は、直接お店にお問い合わせください。

  

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