2024.3.11
『京橋アート・アベニュー』第9回 京橋アベニューで美術のプロが語る魅力とは?
中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」
第9回2月28日(水)放送
出演者 齋藤紫紅洞 齋藤琢磨様
ナビゲーター:JUMIさん
*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。
美術の街、京橋という街の魅力
JUMI
Hello! Radio City京橋ア―ト・アベニュー、皆さん中央区京橋には日本一のアート街があることをご存知でしょうか? 京橋は、いにしえから現代まで多彩なアートの魅力を発信する街なんです。ここには150ものギャラリーが集う日本有数の美術街と言われています。
江戸時代からアートと所縁が深く、美術館級のお宝から、ご家庭で楽しむアートまで何でも揃うアートの街です。そんな京橋にお店を構える美術のプロたちを月替わりでお招きして、アートの街としての魅力を語っていただきます。
それではまいりましょう、京橋アート・アベニュー。
今日お招きしましたのは、齋藤紫紅洞の齋藤琢磨さんです。
齋藤さん、よろしくお願いいたします。
齋藤
よろしくお願いします。
JUMI
斎藤さん、このスタジオには何回目でしょう?
齋藤
出演したことはないんですけど、外から出演者の写真とか撮ってましたので、見学にはお邪魔させていただきました。
JUMI
今日はマイクの前ということでいかがですか?心持ちは。
齋藤
そうですね、やっぱりちょっと緊張しますよね。
ここは結構人通りが多いので。
JUMI
そうなんですよ。思いのほか目が合いますから。
さぁ、そんな斎藤さんに伺いたいことの一つ目。今日のメッセージテーマ「あなたが今、美しいなと思うものは何でしょう?」
齋藤
そうですね、私自身、美術品を扱っていますので、美術品や絵はもちろんそうなんですけど、さっき風景のお話とかされてて思いましたが、新幹線に乗ってて、天気の良い日の富士山、あれを見るとやっぱり僕は日本人としてテンション上がりますし、綺麗なときの富士山は綺麗だな、美しいって本当に思いますよね。
出張でよく名古屋に行くんですけど、そのとき東海道新幹線に乗っていると、やはりそう感じさせてくれます。
JUMI
なるほど、ありがとうございます。
本当にいろんな意味でね、美術品もそうですけれども、美しいものは心を和ませてくれるし、励ましてくれますね。
さて、今日は斎藤紫紅洞のお品をお持ちいただき、お話をこれから伺ってまいるわけですが、まずそもそも京橋への想いについて教えてください。
齋藤
私自身は京橋で生まれ育ったというわけではなく、神奈川県の人間です。ですが、街として、美術街にだんだん新しいビルが建ってきて、ちょっと寂しい気持ちはあります。昔は職人街だったと聞いていますが、京橋という街や文化が残っていなければいけないのかなと、思います。しかも地理的にも日本橋と銀座の間に挟まれて、穴場じゃないですけど僕からすると結構過ごしやすい。ご飯も食べに行きやすいですし、そういった部分ではいい街だなと思っています。
JUMI
なるほど。
昔はすごく細かく「町」に分かれていて、名前も趣のある名前がたくさんあったと言われています。そんな中で京橋にお店を構えて、齋藤さんは今2代目でいらっしゃるわけですよね?
齋藤
そうですね、はい。
二代目として入った美術商とお茶の文化
JUMI
2代目としての何か心構えというか、古美術に対する想いとは?
齋藤
そうですね。
僕自身がですね、美術品が本当に好きで好きで入ってきた人間ではないのです。勉強もしてないですし、たまたま父がこういう商売をやってます。
でもやってみるといろんなお客様もいますし、自然とものも好きになってくるので、そういった部分では良かったかなと思います。仕事と言ってしまえば仕事ですし、僕は元々古いものや古着、古い建物が好きで、何かいいなと思ってて。
JUMI
齋藤紫紅洞さんが主に扱ってらっしゃる古美術はどういうジャンルになるのでしょうか?
齋藤
日本美術を中心として、お茶道具を扱わせていただいています。お茶碗とかもそうですし、あとは書画、掛け軸とかですね。
JUMI
お茶周りのことはだいたいということになるわけですね。
お茶、茶道具の歴史ってどのくらい前からあるのでしょうか?
齋藤
そうですね、千利休はご存知だと思いますけど、だいたい安土桃山時代、だいたい400〜500年前から続いてます。お茶の文化は日本じゃなくて唐物文化から入ってるとは思うんですけど、それを今の形にしたのが千利休さんですよね。
JUMI
ということは、やはり齋藤紫紅洞さんのところには、お客様としてはお茶をたしなむ方がいらっしゃるのか、それとも美術品を探しにいらっしゃるのか、どっちが多いですか?
齋藤
そうですね。
どちらかというと、美術、古美術品が好きだという方の方が多いですね。お茶の人口も年々減ってますから寂しいと思いますね。
JUMI
伝統文化は長く続いていってほしいなと思うわけですけれども、そんな中で今日スタジオにお持ちいただいたのは大変貴重なものですね。これを何と呼ぶのかから教えていただきたいんですが、ざっくり私が見た限りでいうと、「バスケット」って思っちゃうんですよ(笑)
齋藤
その通りなんですけどね、見た感じは。
JUMI
では、これは一体何ですか?というところからなんですが。
小さな宇宙、茶籠という世界
齋藤
これは、お茶道具の世界では「茶籠」と言いまして。
JUMI
茶籠?
齋藤
はい。言葉でちょっと説明しづらいのですが、本当は籠の中にお茶碗とか、茶器だとかいろんなものが入って、これで一つの持ち運びができるものです。
JUMI
ん~、なるほど。
これ縦が25センチぐらいかな、横が15センチぐらいの感じですかね、高さが10センチちょっとくらい。
齋藤
茶箱の籠としては結構大きい方です。
JUMI
大きい方なんですね。
この中に茶道具、例えばお茶碗であるとかそういったものが一式入って、持ち運びできるバスケットですね、洋風に言うと。
齋藤
元々の用途も、今おっしゃったように昔はおにぎりとか入れたのかもしれません。
JUMI
何かつまり、籠が竹で編まれてますよね。竹籠になるのでしょうか?細く竹をさいて編んだであろう、もう本当にしっかりと形が出来上がっている籠なんですけども、この内側の素晴らしさをぜひ齋藤さんに語っていただきたいんですが。
齋藤
やはり見えないところにこだわると言いますか、開けてみるとびっくりというか、この布がですね、明時代の刺繍が施された布で、時代的に言うと400〜500年近く前になってしまうものです。
JUMI
中国の明の時代に織られた布と、それから刺した刺繍なんですね。その布をこの茶籠の中に貼っているわけですね。これは、茶籠を作った人と、布を織ってそして刺繍した人と、それから持っていた人と、三者三様それぞれ時代が違うわけじゃないですか。
齋藤
そうですよね。
多分、布があって、籠があって、持ち手の元にその状況がたまたま揃った段階で、布を切って貼り付けたんでしょうね。
JUMI
一つの芸術作品になったということなんですね。
齋藤
あとは、外側についてる金具も七宝の金具になってまして、これも後から付けたものです。誰かの好みでつけたんでしょうね、中も外も。
JUMI
ということは、代々誰かにこうやって受け継がれてきて、いろいろな時代を経てその時々の所有者が預り物として大切にしてきたということですね。
齋藤
お金は発生してますけどね(笑)。
JUMI
そう、発生してますけどね、預かってるんですよね。それが時代を経て、今ここにこの形であるということですね。
齋藤
そうですね、誰かの手を経て誰かが試行錯誤したんだと思います。
JUMI
こういうものをお品として扱ってらっしゃって、齋藤さんは次にどんなところに、どんな人に手に取って預かっていかれるのかな、なんてことも考えたりされるのですか?
齋藤
やはり、好きな人に持ってほしいです。僕らがいいと思って買ってるので、それをわかってくれる人に買ってもらえれば一番嬉しいと思います。
JUMI
齋藤さんのお店では最近のお客様層というのは、世代的にいかがですか?
齋藤
最近ですとお店のインスタグラム、SNSで発信してまして、幅広い年代の方がいらっしゃいます。僕は今年40歳になりますけど、30代の方が昨日もふらっと来られました。インスタグラムで見て来る方もいますね。
JUMI
若い方が茶籠とかそういったものに興味を持ってくださるというのも、次の時代に繋がる一つの大きな希望ですよね。
齋藤
あとは、僕がこの茶箱をやり始めたのは、今の住宅事情というのもあります。今の住宅は、床の間がないとか、和室がないですよね。でもこのように茶箱セットになっていれば、マンションでもお茶を点てられます。だからこの箱一つで、一つの茶席になるんじゃないかなって、僕は思っているんですね。
JUMI
そうですよね。確かに、必要な道具が全部入るわけですもんね。わ〜素敵な世界。
齋藤
極端な話、今のこのスタジオでもお茶点てられますからね、茶箱セットがあれば。
JUMI
本当にそうですよね。これはある意味、お茶の世界の小宇宙と言ってもいいでしょうか。
齋藤
まぁ、そうですね、素晴らしい例え方ですね。
JUMI
ありがとうございます。ちょっと事前に打ち合わせしました、私達(笑)
そして、持つ人が中に何を入れるかもセンスじゃないですか、その人の趣味だったりする。そういうものも楽しめるということですね。
齋藤
一つ一つ組み立てて、組み上げていくことで一つの作品になっていきます。それをまた新たに籠を買って詰め替える人もいますし、あっちこっちで買って入れ替えてみてと、それが楽しいという人もいます。うちのお客様でも何だかんだもう三つぐらいになっちゃったという人もいます。
JUMI
茶籠が?
齋藤
はい。うちから求めていただいて入れ替えて、余ったものでまた作ってって感じで。ちょっと終わりがないって言ってしまえば終わりがないですね。
美術の街、京橋で楽しむアートイベント
JUMI
さあ、そして実はここ京橋では、東京アートアンティークというお祭りが始まります。4月の下旬になりますけれども、そこでまた多くの方にこういった古美術の世界を知っていただきたいなと思うわけです。齋藤さんも独自のイベントの他に、お仲間と一緒にやるイベントがあると伺ったんですけど、ちょっとこれについてもご紹介いただいてよろしいでしょうか。
齋藤
今回で3回目なんですけど、「茶の美」という団体でですね、この東京アートアンティークに参加させていただきまして、全部で7人いるんですけどもそのうちの5人で、期間限定で東京アートアンティークの期間に京橋のギャラリーを借りて出店します。完全にお茶道具中心で、様々な東京の茶道具商が集まって、一堂に展示即売会をします。
JUMI
そこでも茶籠を見ることができますので、茶籠というのはどういうものなのか、ぜひ目撃していただきたいと思いますね。
さぁそれでは齋藤さん、最後にリスナーの皆さんにメッセージをお願いしたいんですけれども。
齋藤
4月25日から27日に東京アートアンティークというイベントが、日本橋、京橋、銀座でございます。お天気もいいと思いますので、ぜひ京橋の街を知っていただければなと思います。
JUMI
ありがとうございました。
今日の京橋アベニューは中央区京橋2丁目にあります齋藤紫紅洞から齋藤琢磨さんにお越しいただきました。
齋藤さん、ありがとうございました。
齋藤
ありがとうございました。
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