2025.1.11
『京橋アート・アベニュー』第18回 古美術 奈々八 上畝文吾さん
中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」
第18回 12月20日(金)放送
出演者:古美術 奈々八 上畝文吾さん
ナビゲーター:JUMIさん
*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。
難しいことは考えずに、京橋という街が好き
JUMI
皆さん、中央区京橋には、日本一のアート街があることをご存知ですか?古から現代まで、多彩なアートの魅力を発信する街。ここは150ものギャラリーが集う、日本有数の美術街なんです。江戸時代からアートとゆかりが深く、美術館級のお宝からご家庭で楽しむアートまで、何でも揃うアートの街、京橋。そんな京橋にお店を構える美術のプロたちを月替わりでお招きして、アートの街としての魅力を語っていただきます。
今日スタジオにお招きしたのは、古美術 奈々八の上畝文吾さんです。上畝さん、よろしくお願いいたします。
上畝
よろしくお願いいたします。
JUMI
実は上畝さんは、過去にこのスタジオに来てくださってますよね。
上畝
以前に、いつも春にやっているアートアンティークというイベントがあるんですが、その実行委員として関わっているので、イベントのご紹介の時に呼んでいただきました。
JUMI
どうですか? 今回お一人でご登場というのは。
上畝
いや、もう僕なんか喋らせて大丈夫なのかなって・・・。
JUMI
大丈夫、大丈夫。
上畝さんのところは、ちょうど京橋の三丁目なんですけれども、私が郵便局に行く時に、よく通る道でついつい、ウィンドウもそうですけど中をちらっと覗いちゃったりするわけですよね。そんな上畝さんがリアルにご登場くださいまして、ありがとうございます。
上畝
ありがとうございます。
JUMI
さあ、では早速ですが、上畝さんに伺いたい質問があります。まず、京橋の街にどんな思いを持っていらっしゃるのか教えていただいていいですか?
上畝
どんな思いを持っているか?
いやぁ、好きですね。
もう、あんまり難しいこと考えずに、好きですっていう感じですね。
JUMI
どんなところがお好きなんですか?
上畝
なんていうんだろうなぁ、繁華街すぎないところもいいし、落ち着いた感じかなぁと。
銀座と日本橋に挟まれながら結構この雰囲気を作れるっていうのはなかなかいい街だなと思います。
JUMI
確かに、動じてないですよね。
上畝
流されていない感じがしますよね。
JUMI
そういう感じがいいということなんですけども、その京橋にお店を構えられた奈々八さん、なぜこの京橋の地を選ばれたのでしょうか?
上畝
僕は創業者ではないので僕の話ではないのですが、僕の母が30年ちょっと前に文京区の千駄木でお店を開きましてそれで2年ぐらいやってから、なぜか「京橋でやりたい」と。
JUMI
お母様が?
上畝
はい。もう、勢いでこっちに来ちゃったみたいな感じです。
JUMI
うわー。ということで、お母様にとって京橋って、何か閃いたところがあったんですね。
上畝
やっぱり京橋って美術商の人たちにとっては本当に聖地みたいなところで、世界的にも有名な美術街でもあるし、お店を構えていらっしゃる方たちもオーセンティックなギャラリーという感じのお店が多いので、そういうところで勝負してみたかったんじゃないでしょうかね。
JUMI
すごいお母様、挑みましたね。
そう、でもそれを上畝さんご自身が息子さんとして引き継いで、今もその実感ってあるのですか?
上畝
そうですね、実感ありますね。
僕の場合、二代目というよりも母が店を始めてから結構早い段階でこの業界での仕事に参加しているので、二人でお店をやっていくなかで「京橋・日本橋で市民権を得ていこう」というか、そういう活動だったような気がしますね。
石橋を何度も叩いて渡らないのは、確信あるものを扱いたいから
JUMI
さあ、そして奈々八という可愛らしい名前なんですが、扱ってらっしゃる美術品は、どんなものか教えていただいていいですか?
上畝
基本的に鑑賞陶磁器というやきものですね。あのなんていうんでしょうね、鑑賞して使って愛でて楽しい、そういうものを中心にやっています。
JUMI
時代で言うと?
上畝
日本・韓国・中国のやきものを主に扱っておりまして、時代は、まあ古いものだと何千年とか?
JUMI
上畝さんは、一つの作品を選ぶにあたって、ものすごく、ものすごく、ものすごく考えるそうですね?
上畝
あぁ、本当にそうなんです。迷って迷ってというのとは違うのですが。いやぁ小心者で慎重な人間なもので。
JUMI
慎重なんですね。
上畝
そう。石橋を叩いて、叩いて叩いて叩いて、さらに叩いて渡らないみたいな。そういう性格なもので。
美術品ってパッと見た時に迷いのないものっていうものがあるんですよ。そういうものを一応選ぶようにしているというか・・・。
JUMI
上畝さんの目で、一目惚れに近いものに出会ったとする。それを本当に考えて考えて考えて、それでやっぱりこれだっていうものを手にいれるわけですか?
上畝
いや、なんていうのかな?それは仕入れに行く時の前段階のお話しでして決断は早いです。即決です。 パッと見た時に、いいものって圧倒的なパワーがあるんですよ。だからそこでは迷わないわけです。だからその前に迷ってしまったものは絶対に買わない。一瞬でも迷ったものは仕入れないってことですね。
まぁ、それでも間違えてしまんですけどね(笑)
情緒的に、経験として楽しむ古美術もあっていいんじゃないか
JUMI
なるほど。自分の基準があるわけですね。
そしてですね、今日は実はスタジオに素敵な器と、そしてお盆とガラスをお持ちいただいたんですけども、この組み合わせがね、それぞれ素材違うじゃないですか。木であって、陶器であって、ガラスであって。それがものすごく綺麗にマッチしているものをお持ちいただいたんですけど、これについて、ぜひラジオですけど語っていただきたい。
上畝
ラジオでものを語るってすごいですよね。
JUMI
そうなんですよ。だけど、この音声メディアだからこそ、自分で想像して考えるみたいな。
上畝
それが楽しいですよね。
JUMI
なのでリスナーの皆さんに、こういうものかしらって想像していただけるような説明をお願いしたいんですけども。
上畝
喋りは難しいな。
JUMI
すごくハードル上げてますけどね。では上畝さん、まずは、お盆と参りましょうか。
上畝
四角い朱色のお盆です。四隅を切ってあって全体で、1、2、3、4、5、6、7、8、八角形になっていますね。
JUMI
八角形になっています。そして木の美しさが、漆を塗ったことで何重にも乗ると思うんですが、今となってはもう歴史あるお盆は、かなり風合いが出てきてますね。そのお盆の上に乗っているものは何?
上畝
これはそば猪口なんですけど、皆さんがお蕎麦食べる時にそばつゆをつけるアレです。それのちょっと小さいサイズを想像していただいて、そして縁に藤の絵が描いてあります。染付で。染付って白地に青で描いてあるっていうものですね。
JUMI
藤の花がね、たわわに垂れているところ、下がっているところが表現されていて、とても可愛らしいし、素敵な色合いですよね。そして、もう一つ、ガラスをここに組み合わせる。このガラスはどんなものでしょう?
上畝
江戸ガラスなんですけど、江戸ガラスと言っても幕末から明治時代にかけてのものです。
菊の形を象ってあるのかな。直径で10センチぐらいですかね。
JUMI
ガラスって透明感があるから、本当はそのまま透明かと思いきや、なぜかキラキラ光って見えるのはなぜなんだろう?
上畝
透明度の高い鉛ガラスなものですから、キラキラキラって光るというか叩いてもちょっと金属的な音がするんです。
JUMI
このね、3種類の異素材のものを組み合わせても、とてもそれぞれが、際立つっていうんですか、美しいものだなと思うんです。
そのそば猪口になんと、今日はですね、一息でクイッと飲めそうな感じで、コーヒーを入れていただき、さらにガラスにはですね、これどこのチョコレート?
上畝
明治です(笑)。
JUMI
これも京橋にご本社があります。明治さんのチョコレートを入れていただき、なんと素敵な心遣い。こういう楽しみ方をしてもいいんですね。
上畝
そうです。
美術品って難しいとか、怖いとか、いろんなイメージがあって扱うのも怖いって思っちゃったりもしますが、いやいやそんなことはないのです。こうやって使ったら楽しいものですよっていうのをラジオですがお見せ出来たらなぁ思って。
JUMI
だから使っておかないと、せっかくの古美術ももったいないじゃないですか。めでるだけのものもあるけれど、実際こういう器とか、そういったものは「使って使って」って言ってる気がしますよね。
上畝
なんていうでしょうね、すごくもっとこう情緒的に楽しんでもらっていいものだと思っています。
美術論であったり学術的な話であったりそういう難しい話というのは、それはそれで知識欲も満たされるし面白い世界だとは思うんですよね。
そうなんだけど、ただ、それだけじゃやっぱりつまらないって言ったらおかしいなぁ・・・?えーっと、五感で経験することができないというか。
JUMI
そうですね。重さとか感触とかね。
上畝
そうです!!それです!!
だからそういうのも楽しみ方もアリですよというか、美術品が自分の手の届くところにある生活っていうのも楽しいですよっていうことですかね。
JUMI
確かに。
愛でることもできるけど、使うこともできる。それで自分が毎日実感できるって、それが一番ですよね。どこかにしまい込んじゃって、どこだったっけっていうのは、楽しみでもなんでもなかったりする。
上畝
ほら、人生ってこう、ままならないことも多いじゃないですか。
JUMI
本当にそうです。
上畝
そういう時に、僕はたまたま古いもの屋さんだから古いものを持ってきたんですが、そうじゃなくて、好きな作家さんの絵でも好きなコーヒーカップでもいいしお皿でもいいし、そういうものが食卓にあって、救われるような思いがする時ってあると思うんですよ。
最近、僕もちょっと年を取ってきたので、余計にそういうのが分かるようになってきたっていうか・・・。
JUMI
なるほどね。
今日はこれと向き合って話しかけたいとか、そういう思いにもなったりしますものね。しかも、あの時に買ったこの器だよっていうことを思い出せるっていうことですよね。
上畝
そう。お酒を飲んでもいいし、ご飯を食べてもいいし、お茶を飲んでもいいし、なんかそういう時間をね、1日1回は作れないとしてもたまにそういう時間を作れたらいいんじゃないかなと思っています。
来年4月には東京アートアンティーク!
JUMI
そして、冒頭でもお話くださいましたけども、東京アートアンティークがもう来年。この間やったと思ったら、もう来年4月の後半に始まりますよね!
上畝
はい。
JUMI
ということで、これについてもぜひ上畝さんからPRをお願いします。
上畝
え、今ですか? いきなりだー。えーっと、来てください!!!!
JUMI
本当ね。ぜひ京橋の街に来ていただきたいんです。
上畝
そうなんです。来てください!!!!いらして戴いたら街の雰囲気が分かると思うし、楽しいと思います。
JUMI
そんなに広くない街ですからね。いろんな所をくまなく歩いてほしいなって思いますよね。また来年の東京アートアンティークの時にはスタジオでぜひPRしていただけると思いますので。
上畝
僕なんか呼んでもらえるんですか?
JUMI
もちろんですよ、忘れないでくださいね。
というわけで、今日の京橋アートアベニューは、古美術 奈々八の上畝文吾さんにお越しいただきました。
上畝さん、本当にありがとうございました。
上畝
ありがとうございました。
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古美術 奈々八