2024.7.21
『京橋アート・アベニュー』第11回 東京アートアンティーク報告と、京橋アート・アベニュー10回を終えて
中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」
第11回5月24日(水)放送
出演者 繭山龍泉堂 近藤雄紀さん
ナビゲーター:JUMIさん
*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。
美術商の血が騒ぐ時
JUMI
皆さん、中央区京橋には日本一のアート街があること、ご存知でしょうか。古(いにしえ)から現代まで多彩なアートの魅力を発信する街、ここは150ものギャラリーが集う日本有数の美術街なんです。
江戸時代からアートとゆかりが深く、美術関係のお宝からお家庭で楽しむアートまで何でも揃うアートの街。そんな京橋にお店を構える美術のプロたちを月替わりでお招きし、アートの街としての魅力を語っていただきます。
それでは参りましょう、京橋アートアベニュー。今日スタジオにお招きしたのは、繭山龍泉堂の近藤さんです。近藤さん、よろしくお願いいたします。
近藤
よろしくお願いします。
JUMI
お久しぶりですね、このスタジオでは。
近藤
そうですね。東京アートアンティークの実行委員の一人としてお邪魔したのが前回だったように思います。
JUMI
そうですね。今日は京橋アートアベニューということでご出演いただくのですが、まずその前に近藤さんに伺いたいことがございます。今日のメッセージテーマは「あなたの血が騒ぐとき」。どうですか?
近藤
血が騒ぐときですね。まあ私はわりと冷静な方というか…、そうありたいと思っていますが…
JUMI
クールで沈着冷静というのが私のイメージです。あまりバタバタとして、取り乱すというような盛ことはあまりない方ですか?ご自身は。
近藤
そうですね。あんまりない方なんですけれども、やっぱりどうしてもこういう仕事をしているとですね、血が滾る時っていうのはありまして。
JUMI
ありますか、どんな時?
近藤
それはやはり名品を目にした時。
JUMI
そうですよね。例えばどんな瞬間に名品と出会うんですか。
近藤
いろんなシチュエーションがありますけれども、例えばオークションの下見などをしている時に今まで美術館で見て、こんなのいいなって思っていたようなものが出品されている時とか。
または、お客様のところにお伺いして、こんなものを手放したいと言って見せられたものが、まさに自分が探していたような名品だったりすると、そのときはもう血が騒ぐっていうよりも沸騰するみたいな。
JUMI
なるほど。いつも沈着冷静な近藤さんの沸騰したときの姿を見てみたいですね。
近藤
そうですね。やっぱり美術商やギャラリーの方ってというのは、そういうシチュエーションが日々あってですね、それがあるからやめられないみたいな、そういうことだと思いますね。
東京アートアンティークを振り返って
JUMI
なるほどね。初めて知りました、ありがとうございます。
さあ、そして4月後半でしたが、ここ京橋エリアでは東京アートアンティークが開かれましたよね。この東京アートアンティークについて、近藤さんご自身はどんなふうに今年のこのイベントを捉えられましたか。
近藤
毎年4月の終わりゴールデンウィークの始め頃に、この日本橋京橋エリアを中心にして開催しているアートフェアですけれども、前身の「骨董祭り」から数えると、もう30年近くなるような長寿アートイベントです。お客様もご存知の方が多くてですね、毎年この4月の終わりを楽しみにこの京橋界隈に足を運んでくださっています。
やはり今年も例年通り盛況でよかったです。もう最終日は私もお昼が食べられないくらいお客様が途切れなくて。大変ありがたい結果になりました。
JUMI
そうですか。このとき限りで見ることができる。本当に美術館巡りみたいなイメージなんですよ、私の中では。しかもガラス越しではなくて、本当にそのままもう間近で見ることができるって、素晴らしいイベントですよね。
近藤
そう思います。やっぱり美術館に足を運ばれるという方は大変多いと思うんですけれども、こういう画廊だったりギャラリー、美術商を巡るというのは、また違うちょっと贅沢な遊びというか。
JUMI
だから皆さんこの期間は、京橋のこの骨董街、美術街を目指してきてくださるわけですね。素敵なイベントが終了して、手応えもあったということですか。
コレクター気質がよく表現された今回のトークイベント
近藤
そうですね。例えばアートアンティークのイベントとしては、講演会を毎年開催しているんですけれども、今年はテノール歌手の秋川雅文さんをお呼びしてお話しいただいたんですね。
この講演会は例年学者さんだったりとか、昨年は静嘉堂文庫美術館の館長さんをお呼びしてお話しいただいたんですけれども、今年はなぜ秋川さんにお願いしたかと言いますと、古美術雑誌の「目の眼」というのがありまして、秋川さんは同誌でギャラリーを訪ねる企画に登場されるなど、美術品が大変お好きなんですね。今回はその「目の眼」さんとアートアンティークのコラボ企画ということで出演頂きました。秋川さんはテノール歌手としてはもう皆さんご存知だと思うんですが、彫刻をかなりご自分でも彫られていて。
JUMI
そうなんですね。近藤さんの目から見ても本当にプロというか、彫刻家と呼べるぐらいの仕上がりなのですか。
近藤
そうですね。彫刻家としてのホームページもお持ちですね。またコレクションを結構お持ちで、彫刻をご自身が彫られるにあたって、近代の例えば人間国宝だったりとか、そういう有名な方の作品を数十点コレクションされているとおっしゃってましたね。今回は先輩コレクターとしての秋川さんに、皆さんが品物を買う時の心構えだったり、苦悩みたいなものをお伺いしようということで起用になったわけですね。
JUMI
実際に近藤さんもそのお話をお聞きになっていかがでしたか。
近藤
秋川さんの美術に対する熱というか思いは、大変に熱いものがありまして、冒頭の「血が騒ぐ」というのがありましたけど、秋川さんは最近もう彫刻しかやってないみたいな。
JUMI
そうでしたか。歌のレッスンはいつなさるのかしら・・・。
近藤
そうですね。ちょっとあんまり大きい声では言えませんけども、歌のレッスンよりも彫刻を彫ってる時間の方が倍以上長いという風におっしゃってましたね。
またそのコレクションのものを買うにしても、自分でこのぐらいの値段だなって思っていても、やっぱり良いものを見せられた時に、血が騒いでしまうんでしょうね。高くても買ってしまうみたいな、そういう風なことをおっしゃっていて、大変よくコレクターの性質を表現してくださって、面白い講演になったと思います。
JUMI
本当に色々な視点からゲストの方をお招きして、お話を伺えることも東京アートアンティークのお楽しみの一つですね。
近藤
そうですね。
京橋アートアベニュー、1年を振り返って
JUMI
ご準備大変だったと思いますが、お聞きになった皆さんとても楽しかったんじゃないかと思います。
そしてこれまでに皆さんこの東京アートアンティーク、そしてこの京橋アートアベニューには色々なゲストの方にご出演いただいたんですけれども、もう1年になりますね。少し振り返りたいなと思っておりまして。
さあどんな方がご出演いただいたのかについても、ちょっと近藤さんの方からもご紹介いただいてよろしいでしょうか。
近藤
まず最初に弊社繭山龍泉堂の川島が出させていただきました。この京橋には色々なお店がありますけれども、龍泉堂は京橋という土地で100年に渡ってこういう商売を続けているということで京橋歴が長いですから、初回をつとめさせていただきました。
それから書が専門の五月堂さんとか、後は近現代絵画の林田さん、古美術の花徑さん、去来さん、魯卿あんの黒田さんですね。魯山人とかそういう近代の陶芸を扱っている大きなお店さんです。また平野古陶軒の平野さん、お茶道具の齋藤紫紅洞さん、あとは一番最近ですと木雞さんですね。
JUMI
そうですね。本当に多彩な分野で、日本美術もあるし、それから東洋美術もあるということもありますし、そして時代の長さも今回この1年間はかなり古い時代のものから現代に近いものまであったかもしれませんが、それにしても多彩なゲストの方々。
そして一つ一つそれぞれのお店さんが、今日ここで皆さんにお見せしたい作品というのを持ってきてくださったんですけど、近藤さんなんかはどんなものがお好きなんですか?
JUMIさんが忘れられない「フクロウ」と「鬹(き)」
近藤
そうですね、どのお店もやっぱりご自身の専門分野と目筋がありますので、どれがお気に入りと私が言うのもおこがましいですね。JUMIさんが京橋で見た美術品で気になった品はなにかありましたか?
JUMI
もちろんですよ。どれも本当に驚くばかりの素敵な作品だったんですけども、今日繭山龍泉堂の近藤さんが来てくださっているので、繭山龍泉堂さんで言うとね、『ふくろう』。
近藤
あ『ふくろう』ですね。
JUMI
『ふくろう』が本当に可愛かった。それはですね、実は繭山龍泉堂さんに伺って、この『ふくろう』の美しさに私は魅了されて、毎回『ふくろう』は今どこにありますか?と伺っているんです。
近藤
陶器でできた『ふくろう』の可愛らしい作品があるんですけども、うちではたびたび展示会なんかに登場しています。海外の有名なコレクターさんが持っていたもので、本当にあれは珍しいし、愛らしい逸品です。あれは皆さんよくご存知の『三国志』、三国時代、呉の時代の作品ですね。
JUMI
なるほどそういうことですか。ラジオだとなかなかあの可愛らしさというのがお伝えできず限界がありますね。ぜひ実物をお店に行って見ていただきたい。
近藤
そうですね。またチャンスはあるかもしれません。
JUMI
ハローラジオシティの京橋アートアベニューを聞いてきましたと言っていただければ見られるかもしれません。
もう一つはですね、やっぱり繭山龍泉堂さんでは「き」です。
近藤
「鬹(き)」ですね。またマニアックなところを。
JUMI
この「鬹(き)」と聞いて、リスナーの皆さんは普通の枯れ木とかそういうものを想像されるかもしれないんですが、実は龍泉堂さんにある「鬹(き)」は違うんですよね。
近藤
そうですね、「鬹(き)」は私も漢字を書けと言われるとちょっと迷ってしまいますが、新石器時代、紀元前3000年ぐらいの中国の焼き物でして、その「鬹(き)」の特徴を言うと水注ぎのような長い首があって、足が三本足になっていてちょっと動物のような、不思議な形態をしているものです。そのもの自体を表す言葉が「鬹(き)」というものなんですね。
あれも本当にラジオですと私の語彙力の問題もありますけど表現に限界があってですね、ぜひこれも実物また写真で見ていただきたいと。
ただ、あの品はもう売れてしまっていて店では見られません。そういう一期一会があるというのが、美術館と違う面白さでもありますよね。
JUMI
ありますね。本当にね、隠れた名品がこの京橋で発掘されていると言ってもいいですけれども、皆さんの目に触れるチャンスもあるわけですのでぜひお店を訪ねて、楽しんでいただきたいと思います。
そしてこの京橋アートアベニュー、2年目以降についてもちょっと近藤さんから抱負をお話しいただければと思うんですが。
京橋アートアベニューのこれから
近藤
そうですね、2年目以降。今年は10店舗に出ていただいたんですけれども、今年は古美術の方が多い傾向がありました。ただこの京橋エリアというのはコンテンポラリーだったりとか、あとは工芸や漆器とかですね、そういうものを扱うお店もあります。あとは現代の陶芸だったりとか、画廊さんもたくさんありますから、そういう方たちに出演して頂いてさらなる京橋の魅力と幅広さをお伝えできたらいいなと思いますね。
JUMI
なるほど、本当におっしゃる通りですね。ぜひこの後、京橋アートアベニュー2年目に入りますけれども、たくさんの方にまたいろいろな美しい美術品をご紹介いただければなと思っております。ありがとうございました。
というわけで今日はスタジオに繭山龍泉堂から近藤さんにお越しいただきました。近藤さん、ありがとうございました。
近藤
どうもありがとうございました。