2024.4.14
『京橋アート・アベニュー』第10回 路地裏の隠れ家的古美術商の魅力
中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」
第10回3月27日(水)放送
出演者 株式会社 木雞(もっけい)店主 大江夏子さん
ナビゲーター:JUMIさん、立川 公四楼さん
*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。
美術の街、京橋という街の魅力
JUMI
Hello! Radio City京橋ア―ト・アベニュー、皆さん中央区京橋には日本一のアート街があることをご存知ですか? いにしえから現代まで多彩なアートの魅力を発信する街、ここは150ものギャラリーが集う日本有数の美術街なのです。
江戸時代からアートと所縁が深くて、美術館級のお宝から、ご家庭で楽しむアートまで何でも揃うアートの街、そんな京橋にお店を構える美術のプロたちを月替わりでお招きして、アートの街としての魅力を語っていただきます。
それではまいりましょう、京橋ア―ト・アベニュー。
今日スタジオにお招きしましたのは、株式会社「モッケイ」[1] の代表取締役でいらっしゃいます大江夏子さんです。
大江さん、よろしくお願いいたします。
大江
よろしくお願いいたします。
JUMI
さあ、まずは、「もっけい」というお店の名前ですが、一体どんな字を書くのか最初に教えていただきたいです。
大江
「もっけい」の「もく」は樹木の「木」、「けい」は旧字体の「にわとり」という字です。
「木雞」です。皆さん、まず書けないと思います。
JUMI
そうです、書けない読めないパターンがあると思うんですけどね。
今日はね、木雞さんの扱ってらっしゃる素晴らしい美術品についてご紹介いただこうと思います。
そして今日のメッセージテーマがですね、「あなたの好きな道、そして通り」というとこなんですけれども、大江さんにはそんな通り、または道がありますか?
大江
そうですね、京橋なのでね、路地が多いじゃないですか。
JUMI
本当にそうですね。
魅力的な路地がね。
大江
それを道と言っていいのかわからないのですけど、今はちょっと減りましたけどね、路地の中で、私のお店の前の路地、そこは本当に心地が良くて。
JUMI
その路地というのはどのくらいの幅の路地なんですか?
大江
人が2人、3人並ぶとちょっと窮屈というくらい狭いんです。すれ違うのも少し気を遣うような、そんな路地です。
JUMI
その路地を入っていって、はたと木雞さんのお店が現れるという非常にドラマティックなイメージがありますけど。
大江
ドラマティックですか。隠れ家発見みたいな感じですかね。
JUMI
そうですね、私だけが知っているみたいなところがあってもいいのかなって思っちゃうところですけどね。
さあ、そんな大江さんにお話を伺っていくわけですけれども、公四楼さんもいろいろと質問なさりたいことがあると思うので、質問してもらっていいですよ。
公四楼
今の通りの名前もあるのですか。
JUMI
通りの名前ね、どうなのでしょう?
大江
ありません。
JUMI
名もない通りなんですね、素敵ですね。
さあ、そんな中で木雞さん、一体どんな美術品を扱ってらっしゃるのか教えていただいてよろしいでしょうか。
大江
私のところは、中国古美術が専門ではあるんですけれども、とにかく小さいものが多い店として知られてるのではないかと思います。
JUMI
小さいものを集めていらっしゃる、その想いというのは?
大江
店が小さい、まずそこからなんですけど、大きいものは扱えないじゃないですか。
そこから、小さいものってものすごく色々なことが凝縮されていて、例えば美術品であれば美しさだったり、そういったものが本当に手の中で楽しめてしまう、そういう感じを大事にしています。
JUMI
美術品ですから眺めるだけかと思いきや、手の中での感触、重さとか質感とか、そういったものを楽しめるのも小さい美術品の魅力ではありますよね。
大江
あとは、使えるものも、大皿よりも小さいものの方が身近じゃないですか。
JUMI
そうですね。大江さんのところではどの時代のものを扱ってらっしゃるのでしょうか。
大江
古いところで言えば、紀元前2000年くらいになります。
JUMI
なんと!
すごいでしょう、公四楼さん!
この京橋のアート街はですね、紀元前2000年3000年のものから現代美術を扱うお店もあるので、かれこれ足してみると5000年近い年月の中のアートを扱ってるんですよ。すごいでしょ。
公四楼
すごい。
JUMI
大江さんのところは、紀元前2000年ぐらいのものから…?
大江
中国のやきもので現代ものは扱っていませんが、今の日本の作家さんたち、そういったものを年に一度、東京アートアンティークの時に現代のものまで扱わせていただいています。
JUMI
ぜひ皆さんにはこの東京アートアンティークに来ていただきたいですね。今日、大江さんにお話を伺う中で、その京橋への想い、街の想いというのは多分先程の路地に表されてると思うんですけども、やはり長くいらっしゃって楽しい街ですか。
大江
そうですね。京橋って何とも言えない魅力があって、銀座と日本橋の間、東京駅から歩けて東京駅が見えるにも関わらず知られていない。そんな知る人ぞ知る街じゃないですか。
JUMI
わざわざ目指していくところなんですね。
大江
そうですね。
JUMI
その希少性ってとても大事。
大江
と思います。古美術商なので、ちょっと古いとか、ちょっと何か隠れてる、密やかな何とかみたいな、そういうところに魅力を感じてしまいます。
JUMI
さあ、その木雞さんから今日お持ちいただいた作品があるんですけれども。
公四楼さん、ちょっとご覧になってみてこの感想を表してみていただけますでしょうか、ラジオで。
公四楼
なんでしょうかね。…ちょっとすごい。
でも古いようには見えないんですけどね、キラキラしてますよ。
JUMI
本当にそうです、つややかです。
では、これを大江さんにご説明いただきましょう。
大江
はい。名称としましては、「越州窯 青磁蓮弁文合子」。こういった呼び方になると思います。
公四楼
全然わからなかったです。
大江
越州窯というのは、中国の南の方の窯で、中国は青磁が有名だと思うんですけど、その青磁でも比較的早い時期にとても有名な窯ですね。
JUMI
後でブログで皆さんご紹介したいと思いますが、青磁というと青みがかった緑のような綺麗で鮮やかなイメージがあるんです。今日お持ちいただいたこのかわいらしい器はね、本当にシックでね、こんな色やっぱりこの時代を経たから出るんだろうなっていう色なんですけど。
大江
そうですよね、皆さんが思うところの青磁は、13世紀ぐらいの「龍泉窯」など、そういったものの写しだったりします。お茶道具には結構あると思うんですけれども、これはそれとは全く違うタイプの渋くて、落ち着いた釉薬ですよね。
JUMI
そして実際手の中にすっぽり入るんですけれども、軽さ重さどうでした?
公四楼
先ほどですね、持たせてていただきまして、手が震えちゃって落としそうになりましたけど、非常に軽いですね。
JUMI
見た感じより軽いんです。
内側のところを触らせていただくと、素晴らしくエレガントなカーブですよね。
大江
これは10世紀に作られたものなんですけど、この時代にこれだけの曲線を作る技術があったことが本当にすごいですよね。
JUMI
900年代ってことですね…。どうやってこの滑らかさ、そしてこの深みを出しているのでしょうね。
大江さんはもちろん今のようなお話でいうと、もう非常に惹かれてお買い求めになったと思うんですけれども、やっぱり一期一会の、このコが呼んでる!という感覚があるんですか。
大江
そうなんですよね。不思議なもので、たくさんものって見るじゃないですか。オークションに行っても業者の交換会に行ってもお客様のところに行っても。でも買えるもの、もちろんそこには現実的に金銭の問題もありますけれども、実際に買えるものって本当にわずかなんですよ。
JUMI
なるほど。
大江
何か呼ばれるんでしょうね。
綺麗なものでも、時代が確かなものであっても、惹かれないものってあるんですよ。それがその古美術品というか「もの」の力といいますか、惹きつける力、あと相性なのかもしれないですね。
JUMI
大江さんと古美術の相性でいうと、どこの部分が一番反応するんですか。
大江
まず見た瞬間に、このコ触ってみたい、と反応します。
触ってみて、しっくりくる。そこから欲しい、手にしたいっていう欲求が生まれてきます。
JUMI
私のところに来てって感じですよね、なるほどね。
本当に900年代に作られたとは思えないぐらい完成度が高いし、細かいその線っていうんですか、これを何と呼ぶのですか。
大江
これは「毛彫り」、髪の「毛」のように細く彫った線ですね。
JUMI
こういった作品を多くの方に見ていただきたいという思いもおありでしょう!まもなく開催されます、4月の東京アートアンティークで木雞さんを訪ねるとしたら、どんなところをどんなふうに見ていただきたいのか教えていただいていいですか。
大江
東京アートアンティークは年に一度のお祭りのようなものですので、私が普段扱っている中国のかわいらしいものももちろん展示するんですけれども、「Life on this planet」というタイトルで、2階の現代作家さんを扱われるメゾンドネコさんというギャラリーとのコラボの企画をします。
JUMI
なるほど。
大江
「Life on this planet」ですので、生物だったら何でも、動物だったり植物だったり人間だったり、何かそれに関係するテーマの作品をいろいろ並べるのと、現代作家さんのものも結構多く並ぶので、そういったところをよく見ていただけたらとは思います。
JUMI
木雞さんのとこで扱ってらっしゃる作品たちは、小ぶりだとおっしゃっていましたが、装身具をきちんと外して、そっと触る分には大丈夫ですか?
大江
もちろんです。私のところは、基本的には触って楽しんでいただきたいんですね。
ものの持つ心地よさだったり力強さ、そういったものを感じていただきたいので、本当に触っていただくのは大歓迎ですね。
先ほどおっしゃられたように、ちょっとゴツゴツした装飾品の類はちょっと外していただきたいのですけれども。
JUMI
古美術品を見るマナーとしても、ぜひ皆さんにはそれを心がけていただいて、素敵な作品と出会っていただきたいですよね。
さあ、それでは最後になりますけども、ぜひ大江さんからリスナーの皆さんにメッセージをお願いいたします。
大江
今度の東京アートアンティーク、ちょっと早めに私ども25日からではなく4月22日から「Life on this planet」という企画をさせていただきます。作家さんも在廊されますし、たくさん楽しいお話を聞くことのできる良い機会と思いますので、皆様にはお気軽にお立ち寄りいただいて、気軽にお話をさせていただけたらいいなと思っております。
JUMI
ありがとうございました。
というわけで、今回の京橋アートアベニューは株式会社木雞、代表取締役でいらっしゃる大江夏子さんが、素敵な作品とともにお越しいただきました。
大江さん、ありがとうございました。
大江
ありがとうございました。
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