2023.7.16
店主インタビュー 京橋の美術街を知ろう! 日本一のアート街があるって知ってた?
京橋の美術街を知ろう! 日本一のアート街があるって知ってた?
中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」
第一回6月18日(水)出演者 繭山龍泉堂代表 川島公之氏
ナビゲーター:JUMIさん
*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。
ほど良い中間的な良さがある京橋の街
JUMI
皆さん、京橋に日本一のアート街があることをご存知ですか? 実は京橋周辺は150ものギャラリーが集う日本有数の美術街。江戸時代からアートとゆかりが深く、美術館級のお宝から、ご家庭で楽しむアートまで何でも揃うアートの街。そんな京橋にお店を構える美術のプロたちを月替わりでご紹介し、アートの街としての魅力を語っていただこうと思います。
京橋アート・アベニュー第1回目の記念すべきゲストは、京橋2-5-9にお店を構える繭山龍泉堂代表の川島公之(かわしまただし)さんです。
川島さんご自身はこの京橋という町にどのような思いをお持ちでいらっしゃいますか?
川島
私は京橋に会社があるのですが、もう35年以上ここで勤めています。京橋も開発が進んで大きく変わっておりまして、どうしても日本橋と銀座の間にあるという、ちょっと地味なイメージがあると思います。ですが、ほどよい中間的な良さがあって、古い飲食店もポツポツ残っています。基本的にオフィス街なので派手さはないのですが、落ち着きがあるように思いますね。
今まで行った中で一番高かった場所
JUMI
実は、「今までで行った中で一番高かった場所」というのが今日のメッセージテーマなのですが、これを川島流にアレンジしていただくといかがでしょうか?
川島
「高い」というと、どうしても仕事柄「値段」をイメージしてしまいますね。
海外のオークションに行くと高額なものがたくさん売られています。中国古美術の中で、私が経験した一番高かったものは60億円です。中国の北宋時代の文人が描いた絵画で、私どもは扱わない分野なのですが、5年ぐらい前に香港のクリスティーズというオークションに出品されました。当時から高くなると予想されてたのですが、これが私が経験した中で最も高い数字ですね。
JUMI
60億というと、全く想像もつかない世界ですが、そういう世界をご存知の川島さん、そしてこの京橋にお店を構えてらっしゃる、いろいろな美術関係の方にお話を伺っていく機会ができたということを本当に嬉しく思っています。
さて、そもそも繭山龍泉堂さんが京橋にお店を構えられた理由というのは?
茶道具の一流どころが軒を連ねる「仲通り」
川島
「繭山龍泉堂」が会社の名前なのですが、最初の「繭山」が創業者の名字です。ちょっと珍しい名字ですが、繭山松太郎さんという方が、1905年(明治38年)に、古美術の仕事を始めて、今の京橋2丁目にお店を構えたのが大正9年。以来、この場所を離れずに代々営業しています。
JUMI
関東大震災の3年前ということになりますね。創業からすると118年、京橋に移って103年ぐらいということになるでしょうか。今年は関東大震災から100年ですから。
川島
その頃既にこの美術街は、骨董街という呼ばれ方をされていたのですが、中央通りと昭和通りの間に入る日本橋から銀座へ向かっていく一方通行の道が当時「仲通り」と呼ばれていました。
「仲通り」では、明治時代からいわゆる骨董を扱うお茶道具が日本では非常に流行っていました。お茶を嗜むことは、政財界のステータスだったんですね。当時は、茶道具を扱う店を「道具商」と呼んでいました。その道具商の一流どころが仲通りに軒を連ねていました。それもあって繭山松太郎さんには、京橋のこの地に店を構える大きな意味があったのだと思います。
5000年以上の幅でアートを体験できる京橋
JUMI
そういう街の成り立ちを知ることはとても重要なことだと思います。そんな中で、繭山龍泉堂さんが扱っていらっしゃる中国古美術についてですが、中国4000年の歴史といいます。大体どのくらいの年代の幅で扱っていらっしゃるのでしょうか?
川島
中国陶磁、中国美術と言っても色々なジャンルがあります。一番主流はやはり陶磁器ですね。中国は「やきもの」が非常にどの時代でも素晴らしいものが作られてますし、数も作られてるので、どうしても私どもも中国古美術になると、陶磁器が主流になります。今おっしゃったように年代も非常に古くからあって、新石器時代の土器は紀元前3000年ぐらい前のものもあります。これがね、マーケット性があって、結構マニアに人気のある分野なのですよ。
JUMI
紀元前3000年から現代、つまり5000年以上のものが、この京橋のアート街、かつて仲通りと呼ばれていたところに全部集約されてるわけですね?
川島
おっしゃる通りです。もっと古いものも中にあるかもしません。専門分野がそれぞれありますので、古いものをやるところもあれば現代アートギャラリーもあります。
JUMI
そういう意味では非常に幅広く何千年もの歴史がこの通りで見ることができるのですね。ただですね、ちょっと敷居が高いと思ってらっしゃる方もいらっしゃって、毎年1回東京アートアンティークの時は、ぐっと敷居が低くなって皆さんいろんなところをご覧いただけるのですが、日頃も繭山龍泉堂さんの扉を開けてよろしいのでしょうか?
川島
なかなか入りづらいお店の一つとして有名でございますけれども、そのためにお店を開いています。
JUMI
実は扉を開けた瞬間にですね、時代を飛び越えて、素晴らしい作品を目にすることができるのですが、美術館ではこんなにガラスを通さずに見られることはないですよね。本当に5センチ10センチまで寄って見ていいということですね。
川島
むしろねそれが大事なのです。案外、美術館に行かれる方が古美術店に来ると「売ってるんですね」と言う方が多い。美術館で見られるものをお売りしている場所がある。そういうことは、知ってるようで知らない方が多いですね。そして一番大切なのは、ガラス越しではないこと。手元で見ることができるし、手に触れてみることができる。これが非常に大事なことです。そのようなお店がこの京橋にあるということをぜひ多くの方に知っていただきたいです。
数千年もの間、良い状態でものが残る奇跡
JUMI
さて、そんな繭山龍泉堂のおすすめの一品をぜひご紹介いただきたいのですが。
川島
実はですね、ラジオということで映像にはできないのですが、一点持ってきて目の前にあります。
これは唐時代、日本の歴史で言うと遣唐使の時代、大体7世紀8世紀ぐらいです。唐というのは当時非常に大国であって、国際都市でした。アフリカからも唐の都の長安に人が集まってくる100万都市と言われる時代に作られた代表的なやきものが「唐三彩」です。三色の釉薬、緑と褐色と透明釉の白で構成されているやきものです。
JUMI
これは本当に美しく、歪みもなくて。こんなに美しいものが千年も残っていたということですよね。川島さんからご覧になってこういう作品を日々扱われることをどのように感じてらっしゃいますか。
川島
奇跡だな、と思いますよね。これは1300年前のものですが、紀元前3000年前のものが、それもいい状態でマーケットに出るということは、非常に奇跡的なことであると常に感じてます。それらが継承されていくわけですから、そういう仕事を我々がしているということですね。ある意味、そういうところにやりがいがあります。
本物と偽物の違いを見分けるには、入口が大事
JUMI
伝統、そして芸能は色々な意味で伝えていかなければならない私達の使命があると思いますよね。川島さんからリスナーの皆さんにメッセージをお願いしたいのですが。
川島
美術というのは少なからず興味を持たれる方が増えてると思います。特に若い方もアートというちょっとクールな表現ですが、かっこいいこの「アート」という表現で、アートに触れることが非常に今は流行しつつあると思うんですね。
現代アートは、それが非常に進んでると思うのですが、古美術を好きな方も若い人が増えてきています。ただ、古美術に関しては、鑑定書が無いのですよね。これは、真贋問題という偽物が圧倒的に多い世界ですから、古美術をちょっと手にしたいなとか買いたいなと思っても、これが障害になっていると思います。ただ、この京橋にはそれらの専門のお店があり、中国古美術に限らず日本美術もきちんとした本当の名店が揃っています。
ですからまず、本物を見るということです。これが大事です。最初に偽物を見てしまうと、偽物の感覚を覚えてしまいます。まず本物のきっちりしたものを見続けると、感覚でわかるようになります。まずは若い方たちに、京橋でアートの名品をみて、その目を肥やしていただきたい。入口が大事なのです。入り口間違えると大変なことになります。しっかりとしたお店が京橋にあるので、活用していただければなと。
次回は、平安時代から鎌倉時代の古筆を扱う専門店
JUMI
ぜひ皆さんには京橋を訪れて本物に触れていただきたいと思います。
それでは、来月7月にご登場いただくお店を川島さんからご紹介いただいてよろしいでしょうか?
川島
はい。私の店のそば、京橋二丁目の五月堂(ごがつどう)さんです。五月堂さんは、日本の古美術、平安時代から鎌倉時代、特に古筆(こひつ)という難しい世界なのですが、その専門のお店ですね。
店主が上野哲さんという2代目で、五月堂さんは京橋の骨董街の主なお店の一つです。上野さんにバトンタッチして、この京橋の魅力を、古美術の魅力を伝えていただきたいと思います。
JUMI
楽しみにしております。これから毎月1回お送りするこの「京橋アート・アベニュー」、ぜひ多くの方に注目していただきたいと思います。川島さん本当にありがとうございました。
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