2024.1.27
店主の小咄 vol.6 | 隅田十橋
夜にライトアップされる永代橋
【林田 泰尚】
コロナが流行って始めた事がひとつ。
電車をやめて自転車で通勤をするようになりました。
最初は不特定多数の方が乗車する電車を避けて始めたのですが、かれこれ3年も続いています。
行きは季節の花々や木々を愛でながら、帰りはクルクルと表情を変えるスカイツリーを眺めながら、出来るだけのんびりと約一時間の通勤時間を楽しんでいます。
スカイツリーといえば私の住む23区東部からはどこかで隅田川を渡らないと京橋にたどり着くことが出来ません。隅田川に架かる橋ってどれもとても個性的でデザインがすべて違うのはご存じですか?
そこで今回は最近好きになった隅田川の橋について紹介したいと思います。
隅田川に架かる橋は関東大震災でほとんどが焼けてしまい、昭和の初めに再建されそろそろ架橋100年を迎えます。戦前に架橋された言問橋、吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋、両国橋、新大橋、清洲橋、永代橋、勝鬨橋を隅田十橋と呼びほぼ同時に計画されましたが、それぞれ最先端の技術を用いて異なるデザインで帝都復興の象徴として作られました。
またこの架橋の時期はワシントン軍縮会議の影響で主力艦建造を禁止されたため良質な鉄鋼が余ったこともありそれらを流用して作られたそうです。中でも最も下流に位置する永代橋と清洲橋は帝都の門として十橋の建造予算の8割を割いたともいわれています。ちなみに永代橋の張ったアーチ部分を反転するとぴったりと清洲橋に合わさるように設計されています。
個人的にはこの清洲橋がとてもお気に入りでして、同じような吊り橋のレインボーブリッジや淡路大橋にはない小さくても重厚なデザインがなんとも優美で心ときめきます。ただ残念なことに地理的要因から私は利用しない橋でもあります(笑)
そうそうたしかテレビで観たのだと思いますが、永代橋の橋の中央には東京大空襲で焼夷弾が直撃した跡が今でも見る事が出来ます。100年前の鉄橋を今もこうして使えていることも何かとても感慨深く思ったりもします。
ちなみに永代橋、清洲橋に唯一の跳ね橋である勝鬨橋を加えた三橋は2007年に国の重要文化財に指定されました。架橋当時の最高の素材と技術は現在のテクロノジーの助けを得ながら、これからも私たちの暮らしの一部となることでしょう。
最近ライトアップもされているので夜の隅田川テラスから見上げる橋も美しいです。街歩きの余談としてお楽しみいただけたらと存じます。
【 林田 泰尚 】
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林田画廊 Hayashida Gallery
10時30分~18時
東京都中央区京橋2-6-16
2-6-16 Kyobashi, Chuo-ku, Tokyo
TEL:03-3567-7778
WEB:https://www.hayashida-gallery.co.jp/
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「店主の小咄」では、アートなこの街で店を構える個性的な店主たちの寄稿文を掲載しています。美術のこと、まちのこと等、興味のある内容があればぜひ店主のお店を訪ねて話を聞いてみて下さい。