三宅一樹 木彫刻展「壺中の貝」
(終了)
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壺中居
壺中居
貝は、観察すればするほど不思議な生物で、見飽きない。
不思議だからより知りたいと思い、木に彫る。
彫るとわからないところがでてくるから、また観察する。
見る度に新しい発見がある。
夢中になって観察し、無心で彫る行為は楽しい。
海の中で何年も過ごしてきた貝を想像し、思いを馳せながら...。
貝には「成長肋」という筋があります。
成長の履歴とも呼べるそれは、目に見える時の堆積。
樹木の年輪と良く似ています。
私は、木材を吟味して、貝の成長肋と呼応する木目を探します。
それがピタリと当てはまる箇所は、一カ所しかありません。
頼りにするのは、これまで木を深く見つめてきた経験だけです。
それが見つかったとき、作品の大半はもう完成したと言えるでしょう。
あとは楽しく彫るだけなのです。
貝の経験、海の記憶。
木の経験、大地の記憶。
太古の昔は一緒だったであろう記憶。
私の彫刻は、いわゆる写実ではありません。
「海の生命と大地の生命を、リンクさせる行為」なのです。(三宅一樹)
予てより此処に存在し続けてきたかのような独特の風合い。
吟味された木材から繊細に掘り出される木彫は不思議な時の堆積を感じさせます。
掘り出すまでの木と対峙する間を大切にするという作者。生み出される作品には高い精神性と伝 統技術が内包されています。