シュテファン・バルケンホール 「good day」
【オープニングレセプション】
2025年2月14日[金] 17:00 - 19:00
*作家も在廊予定です。
この度小山登美夫ギャラリー京橋では、ドイツの彫刻家シュテファン・バルケンホールの個展「good day」を開催いたします。
本展は作家にとって弊廊での6年ぶり4度目の個展となり、新作を発表します。
【シュテファン・バルケンホールと作品に関して
ー「普通のようで普通でない」人、動物とミニマリズム的表現の両立】
どこにでもいるようでいて、どこか独特な表情や佇まいの人や動物たち。シュテファン・バルケンホール(1957-)は具象のモチーフをミニマリズム的に表現した立像、レリーフ作品を制作し、国際的に高い評価を得てきました。
一本の木から台座ごと彫り出し、ノミの勢いが残る精巧かつ粗い表面と着彩が印象的であり、難しくないけれどなにか気になる存在性や、見る人にユーモアや内省を誘うような豊かな魅力にあふれています。
バルケンホールは、2019年の弊廊個展時のインタビューに際し、自身の作品に関して次のように語っています。
「ニュートラルな表情で、社会性やファッションの意味とは無縁な、誰でも着られる白いシャツと黒いパンツを身につけている。私の彫刻は、鏡のようであり、鑑賞者が自己を投影するスクリーンのようだと言われることがあります。誰もが送る日常の一瞬を凍らせたような、鑑賞者のあらゆる想像を受け入れるような表情が、そういう批評を生み出すのかもしれません。政治や社会的なメッセージとは一切無縁で、街の広場に置かれた偉い人の彫像のようなモニュメンタルな意味性をもたず、純粋に肉体的な存在感があって、パーソナルな知覚を再認識できるような作品を心がけています。私が考える彫刻とは、そういうものなのです。」*1
いままでに世界中で数々の展覧会に参加し、主な個展に新ナショナルギャラリー(ベルリン、ドイツ、1994年)、ハーシュホーン美術館と彫刻庭園(ワシントン、アメリカ、1995年)、シュプレンゲル美術館(ハノーバー、ドイツ、2003年)、ダイヒトーアハレン美術館(ハンブルグ、ドイツ、2008年)、グルノーブル美術館(フランス、2010年)、モスクワ現代美術館(2016年)、ヨルン美術館(デンマーク、2020年)、ヴィルヘルム・レームブルック美術館(デュイスブルク、2020年)などがあり、 今年2025年にはロッテルダム芸術ホール(オランダ)でも開催予定です。日本では2005年国立国際美術館と東京オペラシティアートギャラリーでの個展が大きな話題になりました。
作品はシカゴ美術館、ハーシュホーン美術館と彫刻庭園、ロサンゼルス・カウンティ美術館、フランクフルト現代美術館、国立国際美術館、東京国立近代美術館をはじめ、多くの美術館に所蔵されています。
その他の作家の詳しい説明はこちらをご覧ください
https://tomiokoyamagallery.com/artists/stephan-balkenhol/
【本展および新作に関して
― 身近な木の素材性、見る人と作品の対話により広がるバルケンホールの世界観】
バルケンホールは本展に際し、次のように述べました。
「他国に招かれたときは、その国の文化や絵画の宝物からインスピレーションを受けたい。これは流用ではなく、新しいことを学ぶことへの興味、好奇心、そして文化の交流という贈り物への感謝の気持ちだと思います。
だから、私のヨーロッパの目を通して見た日本文化に関連する彫刻やレリーフが、私の技によって作られるかもしれない。」
彼は木彫の、手で削り、見て考え、また作業するという制作ペースがドローイングをする感覚に似て、一番自分に適していると語っています。
日本には古来より木への親和性や、木彫仏や一木造りの伝統技法もあり、どこかバルケンホール作品の表情の寡黙さや木の素材感は日本の文化とつながる感覚を覚えるかもしれません。
また作家にとって作品と空間の関係は重要な観点となります。
「彫刻が現実になにをもたらすか。そこで大事なのは、空間との関係だと言えます。小さな作品でも巨大な立像よりも存在感を放つかもしれませんし、鑑賞者の気分やその日の明るさによってもイメージが変わってきます。私は自分を過労タイプだと思いますが、作品と世界のそうした関係に興味があるので、作業を続けずにいられないのかもしれません」*1
特別な感情やメッセージを込めるのではなく、身近な木でふつうの人を彫り出し、しかも語りきらない。それが作品を開かれた存在とし、展示空間や鑑賞者の感情を受け止めるようなしなやかな包容力をもたらしています。見る人と作品との対話、作品と空間との関係性が生まれることで、バルケンホールの紡ぎ出す世界観はさらに広がっていくでしょう。最新の作品群をご覧にぜひお越しください。
*1 中島良平「未表情の男の像が、あなたの心を映し出す。彫刻家、シュテファン・バルケンホールの個展を見逃すな。」Pen Online、2019年
アクセス
小山登美夫ギャラリー京橋 Tomio Koyama Gallery Kyobashi
〒104-0031 東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F
03-3528-6250 11:00 -19:00 日曜、月曜、祝日