2016.2.24

Mitearuki

矢島律子 町田市立博物館学芸員 こうして、「中国陶磁うつくし」展準備を始めた頃、関係者からなんか面白い仕掛けを考えろよと言われ、悩んでいたところ、東京国立博物館の三笠景子氏からそのころ東洋館では中国陶磁の特集展示をしますよと情報をいただき、じゃあなんか繋がろうよということになり、相互の講演会への協力とか、広報協力とか考えました。さらに、もっと街に出ようよ、ということになって、東京アートアンティークに絡ませていただくことにもなりました。中国陶磁の輪をもっと広げたいのです。  町田市立博物館は東京の近郊にある典型的な衛星都市の公立博物館で、あまり便利な立地にないので、いらっしゃる方はそれなりに美術がお好きな方々のはずですが、近年のアンケートからは古陶磁は難しいとお考えの方が多いように感じられるのです。作品名の漢字の読み方がわからない、というような。発掘調査で窯が見つかって、墓からの出土資料で年代が判明して、というような情報を長いキャプションで読み込んで理解する、それが時々おっくうに感じて敬遠されるらしいのです。本当は作品名なんて、あとから研究者が分類用に取って付けたようなものであり、またさまざまな研究成果の情報は、もっと興味が湧いたら取り込めばよく、鑑賞の本質には関係ないはずなのですが。  もっと素直に見てほしいものだと思い、なんか楽しい仕掛けはないかなと探しました。「青磁」は常盤山文庫が取り組んできた研究テーマであるうえに、東京国立博物館の特集展示「技と美」展でも青磁コーナーを設ける予定ということなので、「青磁三昧コース」とか、あるいは「白磁・三彩三昧コース」とか作って紹介するのはどうかしら、とか考えました。でも、今ひとつ広がりが足らないと思っていたら、この春は五島美術館さんでも中国陶磁の展覧会をされることや、松岡美術館さんでも開館40周年を記念して松岡コレクション中国陶磁名品展を、今年は漢・唐、宋・元、明・清のシリーズで企画されることがわかりました。どちらも名品、優品目白押しです。「三昧コース」も、もっと充実できるのではないか。そこで、五島美術館、東京国立博物館、松岡美術館、町田市立博物館で「みてあるき」を画策しましょう、とお声を掛けさせていただきました。(注:五島美術館で開催の「中国の陶芸展」は3月27日で終了。)  テーマに沿った作品をあちらこちらから一堂に集めた展覧会も見ごたえがありますが、もともと各館のコレクションには集めた経緯(歴史、由来)や意図があって、つまりは個性があるものです。また、それぞれの館はその空間の中にあって、各々の作品をいかに美しく見せようかと様々に工夫しています。こうした空間とコレクションの特色を味わうのも美術館の魅力です。上野の桜、五島美術館の庭園、松岡美術館のホールからの眺め、大理石の空間、町田市立博物館を取り巻く多摩丘陵の春(中庭に流れ込む桜の花吹雪や、八重桜の花影でさえずる鶯、キツツキやコジュケイのうららかな声など)とともに鑑賞することで、さらに輝きを持つ芸術体験となるのではないでしょうか。  実を言うと、あんまりがっちり決めてません。展覧会開催期間も各館まちまちです。行ってみてください。ある作品について、これが気に入ったんだったら関連作品のこんなのは町田にあるよ、とか、もっとすごいのは松岡にあるよ、とか写真パネルを置いておきます。行き方はあちらの紹介コーナーで見てね、みたいな。各館のブログやツウィッターでのつぶやきなどもありますが、春に合わせた、また発起人(筆者)の性格に合わせたゆるーい企画にします。割引はがきを連携館に配るところもあれば、後期来館用の割引券を置くところもあるかもしれません。そもそも入館料300円のところもあります。136頁の図録を900円で売っちゃうところもあります。完璧な情報はわざと流しませんよ。どれかに行ってみると、なんか分かるってことにしたいのです。東京アートフェアもそうですが、ぶらんぶらん、春と中国陶磁を楽しんでください。 <<「UTSUKUSIよもやま:常盤山文庫と調査と手帳」へ戻る 「常盤山文庫と町田市立博物館が語る 中国陶磁うつくし 」  2016年3月12日(土)~5月8日(日) 常盤山文庫と町田市立博物館が語る ― 中国陶磁うつくし ―   日本人は古くから独特の美意識で中国陶磁を鑑賞し、愛してきました。日本における中国陶磁鑑賞の伝統は、世界に高く評価されています。  本展は、公益財団法人常盤山文庫と町田市立博物館が、中国陶磁の美しさを味わう豊かなひとときを提供しようと企画しました。  町田市立博物館は1992年に山田義雄氏ご遺族から東洋陶磁コレクションを寄贈されたことが契機となって、中国陶磁史の全体を見渡せるコレクションを目指してきました。  公益財団法人常盤山文庫は中国陶磁の名品を所蔵し、日本における鑑賞史に着眼した研究活動を展開しています。なかでも白磁と青磁のコレクションはユニークな存在として知られています。  両コレクションのなかから選びぬいた87 件112 点は、ひとつひとつに見どころがあります。ゆっくりじっくり中国陶磁をお楽しみください。 第Ⅰ章 冥界の夢 -俑と明器- 10件23点 第Ⅱ章 色彩の覚醒 -白磁と三彩- 24 件27点 第Ⅲ章 湖水の色、天空の色 -青磁の完成- 22 件23 点 第Ⅳ章 広がる美 -多彩な展開- 31件39点 開催場所/町田市立博物館 主催/町田市立博物館 http://www.city.machida.tokyo.jp/    〒194-0032東京都町田市本町田3562 TEL 042-726-1531 特別協力/公益財団法人 常盤山文庫 後援/公益社団法人 日本陶磁協会 休館日/毎週月曜日       ただし、3月21日(月・祝)は開館し翌3月22日(火)休館 開館時間/午前9時〜午後4時30分 入館料/一般300円 (中学生以下無料、障がい者半額) 交通: 小田急線・JR横浜線「町田駅」バスセンター7番 「藤の台団地」行にて「市立博物館前」下車、徒歩7分 問い合わせ先:町田市役所 TEL 042-722-3111(代) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ イベント *参加には別途入館料が必要です ・講演会  日時:3 月21日(月) 午後2 時~午後3 時30 分  講師:常盤山文庫主任学芸員 佐藤サアラ氏  演題:「常盤山文庫と中国陶磁」 ・座談会「女性研究者たちが語る、中国陶磁うつくし」  日時:5 月1日(日) 午後2 時~午後3 時30 分  講師:常盤山文庫主任学芸員 佐藤サアラ 氏     静嘉堂文庫美術館主任学芸員 長谷川祥子 氏     東京国立博物館研究員 三笠景子 氏  定員:各回50名 ・体験教室「チャレンジ! !篆刻 ― My 印を作ろう ―」  日時:4 月17日(日) 午後2 時から3 時         5 月4日(水・祝) 午後2 時から3 時  協力:町田市書道連盟会長 宮本博志 氏         町田市書道連盟理事 斉藤千尋 氏         篆刻家 四壁透 氏  定員:各回20名 対象:小学5 年生以上 参加費:300 円(当日支払い)  *いずれも   会場:町田市立博物館2 階講堂(エレベーターはありません)   申し込み:町田市イベントダイヤル(042-724-5656)で3 月1日(火)正午から受付、先着順  *篆刻体験講座申し込み時には印にしたい漢字1 文字を 合わせてお申し込みください。 ・ギャラリートーク(展示室での作品解説)、  各回定員20名(予約不要)  日時:3 月12日(土)/ 3 月20 日(日)         4 月9日(土)/ 4 月23 日(土)         5 月3日(火・祝)/ 5 月5 日(木・祝)         各回とも午後2 時から3 時  講師:4 月9日(土)/ 5 月5 日(木・祝) 常盤山文庫主任学芸員 佐藤サアラ 氏    上記以外 町田市立博物館担当学芸員 連携事業 ・東京国立博物館東洋館特集展示「中国陶磁の技と美」展  主催:東京国立博物館  会場:東京国立博物館  期間:2016年3 月15 日(火)〜 5 月15 日(日)     問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル) ・中国陶磁みてあるき2016 参加館  五島美術館  「中国の陶芸」展  2月20日(土)~3月27日(日)  東京国立博物館 特集展示「中国陶磁の技と美」  3月15日(火)~5月15日(日)  町田市立博物館「常盤山文庫と町田市立博物館が語る 中国陶磁うつくし」 3月12日(土)~5月8日(日)  松岡美術館  「松岡コレクション 中国陶磁 漢から唐まで」 1月5日(火)~4月16日(土)         「松岡コレクション 中国陶磁 宋から元まで」 4月26日(火)~9月24日(土)

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