TOKYO ART
& ANTIQUES

東京 アート アンティーク 〜日本橋・京橋美術まつり 2018

4.26( 木 ) , 4.27( 金 ) , 4.28( 土 )

店主インタビュー つつみ美術( 2011 年)

つつみ美術

堤里志氏

Q お店を始めて何年になりますか?

A ちょうど2000年からなので12年ですね。

Q 独立する前は何をなさっていたのですか?

A 独立する前は東湖堂さんで修行していました。

Q ではご専門は...

A 僕はもともと唐津とか桃山時代のものなどの和物が好きだったんですよ。でも入ったお店では李朝が多かったのと、当時ブームだったので一番よく扱っていました。

Q でも今は李朝だけではなく、色々なものを扱っているのですか?

A そうですね、でもお客さんで李朝を期待している方もいるだろうし、僕の好きなものをわかってくれている人は古い和物を求めにくる方もいます。

Q 修行される前は何かされていたのですか?

A アルバイトみたいなことで古いお店の店員をやったことがあります。

Q ではもともと古いものが好きでこの世界に入ってこられたのですね。

A そうですね、好きだったんだと思います。偶然もありますが、古いものを触り始めてすぐにこの仕事でやっていこうって思いましたので。

Q 修行するお店を決めるきっかけになったことは何かあるのですか?

A 僕は田舎が群馬なのですが、最初にアルバイトしたお店に来ていたお客さんの関係で、都心のお店で勉強してみないかと言われて。
僕の親父は古いものが好きで、時々買ってたりもしてたんです。僕がこういうお店にアルバイトで入ったんだったら、お小遣いにしろよ、と言って蕎麦猪口を一つもらったんです。で、僕はその蕎麦猪口の値段も知らずに安く売っちゃったんですよ。それで後で人にその蕎麦猪口のことを話したら、当時はまだ伊万里が高かった時分で、それは安すぎるって笑われて、ちょっと悔しい思いをして、本気で勉強しようと思いました。

Q では小さい頃から古いものに触れる機会があったんですね。

A うーん。でも、アルバイトで入るまではこういう仕事があるって知らなかったですし、そのとき始めて時分の中でこういうものが好きなんだなって納得できたというか。

Q 地震の時に割れてしまった商品があるとか

A うん、信楽がね。まあ、それだけですんで良かったですけどね。

Q 休みや普段何か趣味にされていることはあるのですか?

A 特にないんですが、子供と遊んだりとかかな。僕らの場合は趣味が高じて仕事になっている人が多いから、何が好きって言われても本当に仕事が趣味になっているんですよね。毎日宝探しですから。宝探しって毎日探していてもなかなか見つからないでしょ?でも見つかった時は嬉しいわけだから。僕らは創り出すんじゃなくて、発見していくしか無いんだよね。数が少ないから、そこを探していくっていう大変さはあるけれどもそれは苦労ではないんです。たまたま掘ってたら出て来て「あった!」みたいな(笑)。

Q 和の陶磁器はどういったものを扱うんですか?

A 地震でほとんどしまってしまったんだけど、(本を見ながら)こういうのがあるんだよね。でも、自分の好みに合うものなら何でも好きです。好みがかなりはっきりしているから。

Q その好みというのはどういったものですか?

A 僕もいつもそのことについて考えているんですけれども、焼物がまず好きなんですよ。他の分野はいくらやってもあまり好きじゃないというか苦手みたい。焼物だけなんだよね。それもその何が好きかと言ったら、僕は触感フェチなんですよ。触りたくなるような焼物が好きみたい。絵は触れないし、彫刻は触れるけど、僕の好きな感覚ではないみたいなんです。だから、李朝のものとか扱っていながらなんなのですが、龍とか鳳凰の絵が描いてあるものは好きじゃないの。これは完全に好みの問題だけど、なんで朝鮮ものが好きなのかなって考えたら、やっぱり肌合いが好きなんですね。中国の焼物もちょっと肌に合わないなと思うのが多いのは、完成されてくると形が整ってきて、絵も丁寧になってくると、何故この焼物にこの絵を書かなくてはならないのかと思うものが多くて。整った焼物に整った龍の絵が描いてあるものが焼物である理由がわからないから僕はそういうのはあまり扱わないんです。
だから、土と火で計算されないものが出来上がったものに描いてある絵は、しっかりしていないかもしれないけれど、その方が同化しているというか、その焼物には合っているんじゃないかな、と思うわけです。何か新しい分野が出てくる時というのは、プリミティブな段階で計算されずに生まれてくるものの中に面白いものが多いという気がします。僕が桃山の焼物が好きなのは、桃山時代というのは、日本の陶磁器の歴史の中で新しい試みをし始めた最初の時代の一つだったりするわけ。だから中国の焼物だって好きな時代はあるんです。宋時代の焼物は、すごく完成度が高いけれども、施されている絵とか彫りがその形ととても合った模様表現だったりするとすごくいいな、と思います。
焼物が一番好きだから、本当は何も絵が描いてないものが好きなんだけどね。だから僕と好みが合うお客さんが来てくれるといいな、と思いますね。お商売だけじゃなくて、同じ感覚の方とお話するのが仕事の中で一番楽しいかな。それが趣味かな(笑)。

Q では洗練されたものよりプリミティブなものが好きなんですね。

A それは突き詰めてしまうとどちらも同じところに行き着くと思うのだけど、家に飾ってあるものは全然ちがうものなんです。幾何学的なものを飾ったり、土っぽいものは何もないんですよね。幾何学的なものやインテリアとしての現代アートは好きなんです。でもそれだけだったら成り立たないと思うんだよね。自然にあるものも必要だし。店でやっていることの反動が家にきてるのかな。

Q 扱っている商品は飾ることがメインのものなのですか?

A 使うものも多いですし、使えるんだったらむしろ使ってもらった方がいいと思います。自分なりに使い方を考えてもらってもいいし、どんどん触ってほしいと思います。唐津という焼物は、土味というのが見所の一つなんだけど、それは上にかかっている模様だとか釉薬ではなくて、その下にあるボディの土の質感を楽しむという焼物だったりするのね。それは見ているだけだとわからないから、そういうものこそ触ってみて、良さが一番わかるんじゃないかな。だから僕にとって唐津は一番好きな焼物かな。

Q 和物でも偽物は多いんですか?

A 日本のマーケットというのは、お茶を中心に古いものがまわってたりするから、お茶道具としての偽物がいっぱいある。そういう意味では千利休の時代からあって、当時の唐物と言われるものもあるんだけど、今高いと言われている観賞ものというのはここ100年ぐらいの歴史しかなくて、もっと古い時代からの偽物作りがあるわけで。

Q 骨董を始めた人でそういった心配をされる方がいると思うのですが、何かアドバイスになることはありますか?

A 本当に何もわからない方には、この界隈の本当に老舗と言われているところに行って、お財布の許す範疇で買えるものがあったら買ってみてください、と言います。そういうお店は高いんじゃないですか、って言われるんですけれど、結果として、ちゃんとした業者さんというのは、本物か偽物かというのは最低条件なんです。その本物の中でもいいものと悪いものとがあって、その中のいいレベルのものの線の引き方がとても高いんですよ。だから本物でも安いものもあるけれども、老舗で買うことで本物の高いクオリティのものがわかるようになるので、そういうところに行ってくださいって言うかな。それで沢山勉強してもらってから、うちに来てもらって、うちの商品構成がいったいどこのレベルにあるのか、僕がどういう姿勢で商売しているのかわかってもらえると思うんです。
美術品って歴史的な裏付けも含めて楽しむことだから、それを勉強することは苦痛にはならないんです。それが本来の古美術の楽しみ方だと思います。インテリアとはちょっと違う楽しみ方なんですよね。僕はインテリアも好きだから、自分の好みに合って、飾って楽しむ方が喜びが高いこともあるんだけど、古美術の楽しみ方としたら、歴史的背景まで掘り起こして楽しむともっと何か見えてくる。それでお茶を一服飲む時に、そういう背景をわかった上で使ってみると、300年前の権力者が飲んだかもしれないもので飲むわけだから、それはただのお茶の味とは違うんじゃないかな。

Q 最後に東京アートアンティークに来られる方に一言メッセージをお願いします。

A 震災のことになるんだけれども、本当に心の癒しになる催しになって欲しいなと思っています。被害にあった人だけじゃなくても、日本人である以上、この報道の中、心が荒んでいるといます。こういうもので一時でも癒される心が芽生えてくれればいいな、と思います。
僕はね、何か人のためになる仕事をしたいと思っていたんだけれども、僕の仕事って誰の役にもたってないな、ってずっと思ってたのね。だけど、一週間ぐらい報道番組を見ていて、家にいることも多かったから心が荒んでいった時に、ゆっくり自分のお店の商品を手にとって見たみたの。埃を拭き取ったりしてたら、やっぱり好きなんだな、って思って。こういうことしている時が一番癒されてるんだなと思ったんだよね。商品を売る側の僕が、自分で自分の商品に癒されたんです。だからこういう時だからこそこういうものを見に来てくださいというのは嘘じゃないな、と自分では思います。だからどんどん遊びに来てください。

どうもありがとうございました。

(2011年4月)

つつみ美術

東京都中央区京橋1-6-7 1階

http://www.tsutsumi-art.com

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