TOKYO ART
& ANTIQUES

東京 アート アンティーク 〜日本橋・京橋美術まつり 2018

4.26( 木 ) , 4.27( 金 ) , 4.28( 土 )

店主インタビュー 井上オリエンタルアート vol.2( 2012 年)

井上オリエンタルアート 日本橋

井上雄吉氏

Q)今回の陶枕についてお聞きしたいと思います。ほとんど売れてしまったと聞きましたが...。

A)色々とわけあってある美術館のコレクションを私の所で扱うことになったのですが、今回作った図録に載せた陶枕はアートフェア東京でその全点数のほとんどがご売約になりました。価格設定が一般的相場価格を無視して、可能な限り低く設定したからでしょうか...。

Q)私も図録を見て値段にびっくりしました。

A)そうですね。他店で同程度の作品を実見しましたが、他店のそれは約五割程度高めに設定してありましたから。ですが、それが今までのスタンダードで、私は業界の「ドンキ」でいいんじゃないかな(?)って思いまして...。展覧会の準備段階から価格の設定には一番気を使いました。もちろん色々とあって、今回はたまたまそれが可能になり私の生涯でも最高に近い、質の高い仕事が出来たと思います。お客様にはこんなすばらしい機会を十分に活用していただき、すばらしい作品を安価でお手許にお届けできたことにこの仕事に携われて本当に良かったと思います。でも残念なことは、全てが一点物の古美術作品ですから全部で百回しか売れません。いや、そのうちの1点だけは残っているから九十九回でしょうけれども...。でもね、この陶枕コレクション自体が大変な努力の上に蒐集出来されたものなのです。正にこの大コレクションを創造された蒐集家である某氏には心からの敬意と尊敬の念を持ちました。それはこのコレクション作品の質の高さとバラエテイーを見れば一目瞭然に理解できます。おそらく、これは私見ですが、この大コレクションを成した蒐集家はさまざまなところでは購入されていません。限られた特定の人物からの購入だったと思います。ですが、残念なことですが「偽物」も少量混入していました。美術館と謂えども偽物が入る余地はあることが残念でした・・・。

Q)これだけ一度に見られる機会はないのではないですか?

A)私共が編纂した本展の展覧会カタログは、お陰さまで、先日静嘉堂文庫美術館の学芸員の方から「この図録は世界で二冊目の陶枕図録」とご評価を頂きました。最初の一冊は以前に開催された大阪東洋陶磁美術館での陶枕だけの図録があり、私共の編纂したオールカラー図録は以前にはないそうなんです。以前の展覧会は香港の著名な個人収集家の展覧会だったのですが、これは白黒とカラーでほぼ同じレベルのものを扱っているものだったのです。その展覧会図録が一つあるだけだったそうです。

Q)四月二十九日(日)午後一時三十分から、たま信地域文化財団の中澤富士雄先生に陶枕についてお話いただくことになっていますが、井上さんにとって陶枕の魅力や面白さはどこにありますか?

A)実は、「枕」という用途があって陶枕は唯それだけだの用途だと想っていたんです。
っで、私は古美術商としては今まで陶枕は扱ったことがなかったんです(笑)。きっと、自分のなかでは「陶枕」とは特殊なモノ、カワリモノ中国古陶磁だと勝手に思い込んでいました。でも、中澤先生からもご教授頂きましたが、中国古陶磁史に有名な「遺跡」発掘による北宋時代の磁州窯作品の研究で、遺跡中から当時の生活そのままの状態が発掘された、大量の陶枕がその中に発見され、昔どの様に使われていたかというのが明確に判明したんです。遺跡の埋蔵地にあった住居跡からは、家屋内部の棚があり、その棚の上に陶枕がずらっと立て掛けられた状態で並べられていたらしいんです。頭の使う面を横にして、ずらっと!ですから、この発掘事例から実は陶枕を使用しない時は、それを眺めて楽しんでいたっていうことが明らかになったのです。これも横にして置いているけれども(展示している枕の一つを指して)側面の形が台形で、何故こういう形になっているかというと、立たせて飾ることが出来るのです。この立てた状態は実に安定した形になるのです。要するに、実は陶枕は眺めるための焼物になるんです!!これはまさに「鑑賞陶器の原点でしょ!この形になると(立てた状態)鑑賞しか用途がないのです。そしてこれを横にすると、実に使い勝手の良い陶枕になります!

こちらの陶枕は側面に出っ張りがあるから立てた時に安定した状態になるんです。この虎の枕は......転がってしまいますね。これは立てなくても鑑賞できますね(?!)。

ですから陶枕というのは楽しめる百パーセントの「観賞陶器」じゃないかって、思います。

Q)実際に頭をのせてみたことはありますか?

A)先日開催された「アートフェア東京」での当店の出店ブースでは実際に寝台状の展示台を会場内に設置してお客様に実際に横になってもらって使ってもらう体験コーナーブースにしました。そうしたら、なるほど、っと十分に納得されてお買い上げいただいたお客様もいらっしゃいました。私が子供の頃は、そういえば白い陶器の枕が家にはありましたよ。今はもうほとんどないだろうけれども、それは夏用の枕で、こうした陶枕は昔の日本にも実際にあったんですよ。この四、五十年でまったく私たち日本人の生活からは忘れられた生活用具じゃないのかな・・・。今では消失した文化だったんじゃないのかな。ですから、この陶枕たちは、全てが実にスーパー鑑賞陶器なんです。

Q)時代によって形が違うのですか?

A)今回は、唐の時代から清まで歴代の作品ご紹介出来ましたが、本展示会図録には清朝は掲載していませんが、「アートフェア東京」の出店ブースでは展示しました。清朝以降の時代もありました。あとは、小さい枕もあって、腕を載せるための腕枕ですね。写経する時に使うものです。

Q)これは位の高い方達が使っていたものなのですか?

A)決してそうではないと思います。庶民が使ったモノだと思います。これは磁州窯といって、日本のヤキモノでいうならば益子焼と言ったところでしょうか。「陶枕」には主にこの磁州窯が多いんですね。だから絵も民芸調でしょ?当時は枕屋さんってあったと思うし、中国は広いから南の方は一年中暑いでしょ?こういう枕が一年中必要だったでしょうね。「頭寒足熱」。頭は冷まさないといけないから。暑い場所では眠れないですからね。中には「クーラー付き陶枕」もあるんですよ。すごいですねー!この陶枕は明の陶枕ですが、図録には載せていないのだけど、頭の汗がたまるのを防ぐために頭部に穴が透かしになり、側面にも穴が空いていて、風通しがいいんです。焼物だから熱を貯めないし涼しく眠れるんです。本当に安眠枕です。夢用の枕というか。人間は一日のうち、長時間寝ます。睡眠は絶対不可欠な生きる要素ですからね。

Q)今回の展覧会に向けて目玉になる作品はありますか?

A)一点売れ残ってしまった「北宋磁州窯白磁刻詩文枕」です。価格的にはこれが一番高い陶枕です。

Q)では今回は図録に載っていないものを展示されるのですか?

A)図録に掲載した作品はほぼ完売致しましたが、ご売約後もまだお預かりしている作品などや、丁度図録製作中に補修・修理などで掲載不可能になってしまった作品とか、同意匠だったので重複しないために保留にした作品もあったので、図録掲載外の作品がありますので、それを展示即売いたします。

Q)東京アートアンティーク中にまだ残ってるでしょうか(笑)?

A)まあ、どうでしょうか。ここまで来たら完売したいものですが・・・。

では、完売を願って。お忙しい中ありがとうございました。

井上オリエンタルアート

井上雄吉さんにお話を伺いました。

※ 図録は一部1,500円で販売しています。

(2012年4月)

〒 103-0023 中央区日本橋本町4-1-12
http://www.inouye-art.com/

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